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彼女がドーナツを守る理由 36
2025/2/23
テレビではどのチャンネルも太陽の話題で持ち切りだった。落下現場が繰り返し中継され、何の変哲もない民家が前から横から上空から、テレビ局のカメラによって眺め回され、世界中に発信された。立ち入り禁止の黄色 ...
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彼女がドーナツを守る理由 35
2025/2/23
新人賞の最終選考候補者が発表された。その中に僕の名前はなかった。 イツキ叔父は今度は、残念会なるものを開いてくれた。残念会とはいっても、中身はお祝いの会と変わらない。名前が変わっただけだ。けれど、 ...
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彼女がドーナツを守る理由 34
2025/1/14
─────第二章──── 定期購読している文芸誌に応募していた僕の作品が二次選考まで残っていた。五十編ある候補作の中のひとつに過ぎなかったが、それでもここまで残ったのは初めてのことで、僕は飛び上がる ...
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彼女がドーナツを守る理由 33
2024/8/16
外側の世界に立つと、強く吹く風の音が耳を打った。僕はその「ビュウウ」という暴力的な音にしばし耳を傾けた。このように強く吹く自然な風というものは、僕には馴染みのないものだ。初めて聞いた時には何の音かも ...
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彼女がドーナツを守る理由 32
2024/7/22
リビングのソファに座っていると、家中どこもかしこも静まり返って、家というのはこんなにも静かだっただろうかと不意に思った。休日に家にいるのは久しぶりのことだった。 テレビ台が埃を被ってうっすらと白くな ...
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彼女がドーナツを守る理由 31
2024/6/16
意を決してトンネルの外に出ると、驚いたことにモカはそこにいた。崖の淵の少しばかり手前に、うつむいて座っている人影があった。まるで迎えが来ないことに失望した小さな女の子のようだった。ひとりきりで、崩れ ...
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彼女がドーナツを守る理由 30
2024/6/16
雨は嫌いだわ、と彼女は言っていた。 ザアア、と激しい雨の音が、僕の身体を優しく包み込み、脳を満たして、思考を程よく鈍らせる。 モカが雨を嫌いな理由は、ロングスカートの裾が濡れるからだった。モカは ...
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彼女がドーナツを守る理由 29
2023/9/30
「もう来ないでほしいの」 と静かに言ったモカの言葉はあまりに突然で、僕は一瞬、それはこの外側の世界にだけある何かを指す特有の言葉なのかと思った。しかしモカの城であるこの占いの店の、カウンターの向こうに ...
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彼女がドーナツを守る理由 28
2023/8/2
通りは秩序を失った群衆でごった返していた。警笛を鳴らして交通整理をしようとする警察官や、「救急隊はまだか!」などと飛び交う声から、大きな事故があったようだと推測できた。いつもなら気持ち悪いくらいにス ...
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彼女がドーナツを守る理由 27
2023/6/4
「ゴルジ―ラ」「ゴルジ―ラ」「そう」「それがこれ」「うん」 僕の前にはほとんど黒に近い焦げ茶色の、見慣れた液体が入ったカップがある。湯気と共に立ち昇る香りが芳しい。「ヨウの世界では何ていうの?」「コー ...