maki

掌編小説 私は、積み上げる

2022/12/11  

 私は積み上げる。 私は箱を、積み上げる。 大きな箱。 小さな箱。 紙でできたのや、プラスチックのもの、薄い木でできたもの。 固いの、脆いの。 色や形も様々。 ひとつひとつ、持ち上げては、前に置いたも ...

積読が減らない理由

2022/10/18  

積読(つんどく)。 おそらく読書好きの間でしか通じない言葉。 意味は、『本を買って、読まずに積んだままにしていること』です。「積んどく」に掛けた表現なのだそう。 本好きの人のお宅にはきっとあるのではな ...

掌編小説 落とし物

2022/12/11  

「落としましたよ」 と後ろから声を掛けられた。「あ、どうも……」 と言いながら振り返る。今にも雨が降りそうな、湿った夜闇。そこに立っていたのは、頭から黒い頭巾をすっぽりと被った男だった。小柄で浅黒く、 ...

彼女がドーナツを守る理由 20

2022/10/30  

『彼女は荒涼とした大地に立っている。頭上に広がるのは無数の小さな光る宝石を散らした無限の暗闇。ひときわ明るく輝く赤い宝石が暗い大地にほの明るい光を落とし、彼女が両手に握り締めている二丁のレーザー銃の銀 ...

クッキーのお話

2022/10/11  

先日、ステラおばさんのクッキーを買いました。何となく食べたくなって。私の住んでいるところは田舎なので、ステラおばさんの店舗などはなく、スーパーかネットで箱入りの詰め合わせを買うしか方法がありません。近 ...

感想 ふつつかな悪女ではございますが~雛宮蝶鼠とりかえ伝~ 中村颯希(原作)・尾羊英(コミック)

2022/12/11  

リンク 私は漫画が大好きなので、スマホのアプリで毎日漫画を読んでいます。幾つかアプリを持っているのですが、『ピッコマ』というのが特にお気に入りで、これは1話読み終わったら似た傾向の作品を次々紹介してく ...

読書感想 いけない 道尾秀介

2022/10/27  

リンク 四章から成るこの物語は、各章末にある写真と合わせて楽しむという珍しいスタイルになっています。挿絵ではないんです。まず小説の本文を読んでから写真を見ると、そこに隠されている真実に気付く、というも ...

彼女がドーナツを守る理由 19

2022/10/15  

「信じられないな」 目の前には幾つもの球体が浮かんでいる。それらは次から次へと現れ、視界いっぱいになったかと思うとまた小さな点になり、やがて消えてゆく。「石頭ね」モカが言った。「空に浮かんでいる『星』 ...

読書感想 レイチェル ダフネ・デュ・モーリア

2022/10/27  

リンク この小説の作者、ダフネ・デュ・モーリアは、アルフレッド・ヒッチコック監督が映画化した小説、『レベッカ』『鳥』がとても有名なイギリスの作家さんです。この『レイチェル』は、もうひとつの『レベッカ』 ...

彼女がドーナツを守る理由 18

2022/9/19  

 内側の世界へ帰るトンネルの入口のところまでモカは車で送ってくれた。そこは廃墟となったおそらく工場の敷地であるらしく、誰も寄り付かなそうな寂れた場所だった。高い崖の上にあり、眼下には街が一望できた。  ...