同名の映画にもなっていますね。2015年刊行の長編小説です。
帯の文章はこちら。
『「子どもを、返してほしいんです」
親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。
電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、だが、確かに息子の産みの母の名だった。
子を産めなかった者、子を手放さなければならなかった者、
両者の葛藤と人生を丹念に描いた、感動長編』
どうしますか、ある日いきなり「子どもを返して」なんて言われたら……。
ぞっとしますねえ。
では、あらすじです。ネタバレを含みますので、まだお読みでない方はご注意ください!
〈あらすじ〉
六歳の息子がいる栗原家に、この頃無言電話がかかってくるようになっていた。
そんなある日、息子・朝斗の通う幼稚園で園児が遊具から落ちるというトラブルが起こり、朝斗がつき落としたのだと疑われる。しかし朝斗はやっていないと言い、母・佐都子はそれを信じる。トラブルは無事解決し、ほっとしたのも束の間、また電話がかかってきた。今度は無言ではなかった。電話口で、相手は「カタクラ」と名乗った。そして、「子どもを、返してほしいんです」と言ったのだった。それは朝斗の産みの母、片倉ひかりだった。片倉ひかりは、「それがもし嫌なら、お金を用意してください」と言い、でなければ朝斗が養子だということを、周囲にも本人にもバラすと脅迫する。佐都子は夫の清和と共に、後日片倉ひかりと名乗った女と会うが、夫婦は女が朝斗の産みの母ではないと確信し、女にもそう告げる。
そのひと月後、栗原家に警察が訪ねてきた。刑事は一枚の写真を見せ、この女性に見覚えはありませんかと佐都子に尋ねる。それは先日会った、片倉ひかりを名乗った女の写真だった。女は、一ヵ月ほど前から行方不明になっているという。さらに刑事は、この女性には窃盗と横領の容疑がかけられていると告げたのだった。
子供を希望して不妊治療に臨むも、なかなか授かることのできない夫婦の長い苦しみと、十四歳で妊娠し、気付いた時には中絶可能な時期を過ぎてしまっていた少女の葛藤。少女のその後の人生、そして、どうして子供を託した夫婦を脅迫するに至ったのか。それらが丁寧に描かれた物語でした。単行本で346ページという長編ですが、とても読みやすかったです。丹念に紡がれた文章がたどり着く、ラストの美しい情景は、何度読んでも涙が出ます。
良い小説でした!
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