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読書感想 いけない 道尾秀介

四章から成るこの物語は、各章末にある写真と合わせて楽しむという珍しいスタイルになっています。
挿絵ではないんです。
まず小説の本文を読んでから写真を見ると、そこに隠されている真実に気付く、というもの。
写真で物語がひっくり返ってしまうのです。
一読して最初は分からなかったものも、最後まで読んでからもう一度写真を見ると、その意味に気付いてぎゃーっと驚きます。笑

さてこの本、帯に使用方法が書いてあります。

本書のご使用法
・まずは各章の物語に集中します。
・章末の写真をご覧ください。
・隠された真相に気づきましたか?
・「そういうことだったのか!!」
 だまされる快感をお楽しみください。
 ※再読ではさらなる驚きを味わえます。

使用法が書いてあるのおもしろいですね。
この通りに読んでみましょう!
それでは各章のタイトルとあらすじです。
ネタバレの部分がありますのでご注意ください。

第一章 弓投げの崖を見てはいけない
第二章 その話を聞かせてはいけない
第三章 絵の謎に気づいてはいけない
終章 街の平和を信じてはいけない

あらすじ
自殺の名所となっている『弓投げの崖』は、車の運転中に決して見てはいけないと言われている。崖の上に自殺した死者たちの霊が集まっていて、運転中に目を合わせると連れていかれるからだという。その近所の住人である安見邦夫はそんな迷信には惑わされないが、その先にあるトンネル内で、『弓投げの崖』で肝試しをしようとした若者の車を避けようとして事故を起こしてしまう。若者は事故の発覚を恐れ、無情にも潰れた車の中にいる邦夫の頭を掴んで何度もハンドルに打ち付けた。
自宅の居間で遺影を見つめる安見弓子の元に、『十王還命会』という宗教団体が勧誘にやって来る。弓子はそれを追い返す。
警察が邦夫と事故を起こした車の持ち主を追っているが、なかなか見つからない。その人物は、警察が捕まえる前に何者かによって殺害されてしまう。そしてその仲間が報復のため、邦夫の妻である弓子のアパートへ向かうが……。

第一章で事故が起こり、それに端を発した殺人事件が起こります。第二章ではガラッと場面が変わり、珂(かー)という名前の中国から日本へやって来た男の子がある目的のために唐辛子を万引きするところから物語が始まります。一見第一章とは全然関係ない話が始まったように思いますが、後でちゃんと繋がってきます。第三章で『十王還命会』の幹部の死の真相を追う刑事のお話。この章の最後の写真の意味は、再読してやっと分かりました。本文中に出てくる絵と比べると……ぎゃー! です。笑 よーく見てください。そして終章。全ての謎が解き明かされ、犯人、動機、殺害方法、全て明らかになりました。少し切なさを感じる穏やかなラストを迎えた、その後の写真ですよ。
その意味が分かった瞬間、ブワッと鳥肌が立ちました。本当に、ブワーッと! この写真があるのと無いのとでは、物語の結末が全く違ったものになります。何て鮮やかなどんでん返しなのでしょう。こんな方法があるとは……。この衝撃を、ぜひ味わってみてください!
沢山の仕掛けが盛り込まれているこの作品、再読するたびに「ああー! これこういう意味か!」と震撼すること間違いなしです!

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