以前、同じ職場で働いていた女性が、休憩時間にこぼしていたのです。
「お義母さんがお義姉さんの子供のほうを可愛がるのが嫌。こっちは同居してるし、長男の子供なのに」
お姑さんが同居している女性の子供よりも、嫁に出た娘の子供を優遇しているというのです。それが不満だと。
そら嫌ですよね。自分の子供よりも同じような立場の他の子供を可愛がられたら。
何て意地悪な婆さん……なんてことを思ってしまいそうです。
しかしこれ、実はお姑さんのせいではなく、ミトコンドリアのせいなのかもしれないのです。
どういうこと???
ミトコンドリアというのは、細胞の中にある小器官のひとつです。細胞の中には、核とかゴルジ体とかリソソームとかリボソームとか小さいのがいっぱい入っていますよね。そういうののひとつです。ミトコンドリアの役割はエネルギーの生成です。私たちが身体を動かしたり、食べたりしゃべったり、食べた物を消化したりといった活動をできるのは、ミトコンドリアがエネルギーを作ってくれているおかげなのです。ミトコンドリアは身体の中のエネルギー工場と呼ばれています。
このミトコンドリアは、他の小器官とは違う特徴を持っています。
細胞の中の『核』の中にはDNAが入っていて、その中に遺伝情報が入っているわけですが、ミトコンドリアはこの核のDNAとは別に、独立したDNAを持っているのです!
ちょっとビックリしませんか。
ミトコンドリアが持っているDNAのことを『ミトコンドリアDNA(mtDNA)』といいます。
このmtDNAがお姑さんの話と深く関わってくるわけですが、その理由というのが、これ!
『mtDNAは母系でしか遺伝しない』
です!
普通DNAというと、『核』の中に入っている『染色体DNA』のほうを思い浮かべると思います。これは父親からも母親からも同じだけ、2分の1ずつ受け継ぎます。しかしミトコンドリアDNAは、母親から受け継ぐものが100パーセント。父親からは全く受け継がないのです。受精の際の何やかやでそうなるらしいのですね。
つまり……
お話の最初に出てきた女性の例では、お姑さんの二人の孫のうち、お姑さんのmtDNAを受け継いでいるのは『娘の子供』だけで、『長男の子供』が受け継いでいるのはお嫁さんの系列のmtDNAということになります。
なので意地悪ではなく無意識のうちに、お姑さんもそれと気づかないうちに、自分のmtDNAを持っている孫をより可愛がってしまうのではないか、という。
そう、ミトコンドリアに操られて……。
という話を、その同僚の女性にしてあげたかったのですが、さすがに自制しました。笑
急にミトコンドリアって言われてもね……。
同じ悩みを持つ全国のお嫁さんが、この記事を読んで少しでも心を軽くしてくれることを願います!
この記事はブライアン・サイクス著『アダムの呪い』という本を参考に作成したのですが、その本によると、「この世界の主役は実はミトコンドリアで、私たちはミトコンドリアを運ぶためのただの船に過ぎない」のだそうです。とてもおもしろい内容だったので、おススメです。
余談ですが……
『ルナティック雑技団』という漫画をご存じでしょうか?
1990年代に『りぼん』で連載されていた岡田あーみんさんの漫画で、少女漫画であり、ギャグ漫画です。
内容は、親の仕事の都合により学校の人気者・天湖森夜(てんこもりや)の家に下宿することになった女子高生・星野夢実(ほしのゆめみ)が、息子を溺愛する森夜の母・ゆり子にいびり倒されたり、森夜のファンの女の子たちから嫉妬されたりといった騒動を描いたドタバタコメディです。
まるで姑からの嫁いびりのような扱いを受ける夢実ですが、この夢実ちゃんがなかなかタフで、ゆり子お母さんも必死すぎて何だか憎めなかったりと非常に笑える漫画です。
いびりは良くないことですが、この漫画を読むと、男の子の母親は誰でも、多かれ少なかれゆり子お母さんなのかもしれないなーと思ったりするのでした(私自身男の子の母親ですが……)。
意地悪なお姑さんの頭の中がちょっと分かるかもしれません(?)。
めちゃくちゃおもしろいので是非!