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読書感想 人間に向いてない 黒澤いづみ

第57回メフィスト賞受賞、黒澤いづみさんの『人間に向いてない』です。

メフィスト賞は個性的でパンチの強い作品が多いイメージです。
表紙からして気になりますねー。赤ちゃんを抱いたお母さんのようですが、二人とも顔がありません。穏やかじゃない雰囲気がプンプン伝わってきます。笑

さて、あらすじです。物語の内容に触れる部分がありますので、まだお読みでない方はご注意ください!

〈あらすじ〉
人間が突如として異形の姿へ変貌してしまう奇病が発生する。
それは関東地方の某所で初めて報告され、瞬く間に全国へと広がった。難病として認定されることとなったそれは、『異形性変異症候群』別名ミュータント・シンドロームと名付けられる。
田無美晴はある日の午後、息子の優一が異形へと姿を変えてしまったのを発見する。優一は二十二歳。無職で引きこもりだった。
『異形性変異症候群』は引きこもりやニートの若者の間で広まっていた。美晴はこのニュースを見た時から、(うちの子も、いつかはこうなってしまうんだわ)と怯えていたが、ついにその日が来てしまったのだ。
患者──変異者と呼ばれる──はそれぞれに異なった姿をしているが、虫のようだったり獣のようだったりする身体の一部が人間のパーツで出来ており、一様に見るにおぞましい。優一の場合は虫のような姿をしていたが、腹の下に生えたたくさんの小さな脚は人間の指の形をしていた。
変異者はそのグロテスクな見た目から、世話を放棄されたり、暴力を振るわれたり、殺されてしまったりするケースが多発する。
『異形性変異症候群』は治療法などがなく、致死性の病だと認定される。病院でこの病気だと診断されると、それを以って患者は死亡したものとみなされるのである。それ以降は棄てようが殺そうが法的に何ら問題がない。
引きこもりの息子にうんざりしていた美晴の夫・勲夫は、変異した息子をさっさと棄ててしまえと言うが、美晴はそれを拒否。異形となった息子と暮らし続けることを選んだ。

専業主婦の母・美晴の視点で語られる物語ですが、時折別の人物の視点で別の変異者とその家族のエピソードが織り込まれています。美晴と優一は比較的穏やかに暮らしていますが、他の変異者家族はそうもいかないようで……。

何とか息子を守ろうと手探りしながら日々を送るうち、美晴はこれまでの息子への接し方を振り返ります。何故こんなことになってしまったのか、どこで間違ってしまったのか。
やがて明かされる変異者たちの心のうち。何故彼らは異形へと姿を変えたのか──
美晴は息子との未来に希望を見いだせるのでしょうか。

ラストは中々胸のすく展開でした。
圧巻の筆力で読み応えのある一冊でした!

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