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読書感想 レイチェル ダフネ・デュ・モーリア

この小説の作者、ダフネ・デュ・モーリアは、アルフレッド・ヒッチコック監督が映画化した小説、『レベッカ』『鳥』がとても有名なイギリスの作家さんです。
この『レイチェル』は、もうひとつの『レベッカ』といわれているそうです。ロマンスとサスペンス、執拗に影響を及ぼしてくる死者の影、緊迫感溢れるストーリーなど似通うところがあり、レベッカ同様大変人気なのだそう。
舞台は十九世紀のイングランド・コーンウォール地方。雨がよく降り、天気はだいたい悪天候。寒々とした雰囲気が伝わってきます。
原題は、『MY COUSIN RACHEL』
そのまま訳すと『いとこのレイチェル』です。

ふーん。いとこなんですねえ。
……で、誰の?

〈あらすじ〉
幼い頃に両親を亡くしたフィリップにとって、保護者となった従兄のアンブローズは、父であり、兄であり、世界の全て──神のような存在だった。アンブローズは変わり者なところがあり、紳士的だが女嫌い。しかし偏屈者ではなく、隣人たちから好かれ、尊敬されている。イングランド・コーンウォール地方の一領主であるアンブローズにフィリップは跡継ぎとして育てられてきた。フィリップの生涯の目的は、アンブローズのようになることだった。
フィリップが大学を卒業する頃、アンブローズはリウマチに掛かり、冬を海外で過ごすようになる。一年目、二年目は何も問題がなかった。しかし三年目、アンブローズはイタリアで出会った従姉妹にあたる女性、レイチェルに心を奪われ、そのままイタリアで結婚してしまう。フィリップはそのことをアンブローズからの手紙で知らされる。
喜びに沸く地元の人々とは裏腹に、フィリップは嫉妬心を押し隠す。しばらくの後、アンブローズから便りが届くが、そのただならぬ内容に不安になったフィリップは急遽イタリアへ旅立った。しかしフィリップの到着を待たず、アンブローズは異国の地で亡くなってしまう。
アンブローズからの手紙には、『ついに彼女にやられた。私をさいなむあの女、レイチェルに』と記されていた。フィリップはアンブローズを奪い死に至らしめた女、レイチェルへの復讐を心に誓う。
帰国後、アンブローズの遺品を持ってイングランドに来ているというレイチェルを、フィリップは自分の屋敷に招待する。敵対心たっぷりで彼女を迎えたフィリップだったが、出会って一、二日ですっかり打ち解けてしまった。レイチェルは想像していたどんな毒婦とも違い、小柄で瞳が大きく、ユーモアに溢れた女性だった。まわりの人間もレイチェルを美しい人だと褒めたたえ、とりこになる。
フィリップのレイチェルへの親しみは、あっという間に恋心へと変わった。フィリップは何やかやと理由をつけてレイチェルを屋敷に引き留める。
そんな中、アンブローズの遺品の中から、レイチェルに対するある憂慮を綴った手紙が見つかる。フィリップはその手紙を無視しようとする。しかし、次第にアンブローズの恐れたレイチェルの裏の顔が見え隠れするようになる。
レイチェルに夢中のフィリップは暴走する恋心を止められない。それと同時に深まる疑念。そして衝撃のラストへ……

死をもたらす女性、ファム・ファタールと彼女に翻弄される男、そして死者の影が織りなす緊迫したサスペンス。

『彼女は本当にやったのか、それとも潔白だったのか? たぶんそれも、煉獄に行けば分かるのだろう』

1951年に発表されたこの作品。文章は重厚で、クラシック。それもまた、たまらんのです。
読んだことない方には是非おすすめしたいです!

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