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読書感想 私の頭が正常であったなら 山白朝子

八編の短編から成る短編集です。

突然幽霊が見えるようになった夫婦(『世界で一番、みじかい小説』)、首から上がない鶏を可愛がる少女(『首なし鶏、夜をゆく』)、酔っぱらうと時間を行き来する女性(『酩酊SF』)、宇宙につながっている布団を愛用する作家(『布団の中の宇宙』)など、全て不思議なお話です。

フワッとしていて優しい物語という印象でした。ちょっと不思議な感じの本が読みたいなーという時に良いと思います。
一ページあたりの文字量が多すぎず、開いたページの内容がスッと入ってくるような文章で読みやすかったです。
疲れている時にもおススメです。

各話のタイトルと簡単なあらすじです。

『世界で一番、みじかい小説』
結婚三年目の夫婦は、ある時を境に幽霊を見るようになった。それまで特に霊感などなかったのに、突然二人して見るようになったのである。二人は試行錯誤しながらその原因を探る。

『首なし鶏、夜をゆく』
クラスで孤立している少女は、密かに首から上のない鶏を飼っていた。少年はその秘密を知ったことをきっかけに少女と親しくなり、一緒に首なし鶏を可愛がるが、少女は突然誰にも言わずに姿を消してしまった。

『酩酊SF』
ある作家が大学時代の後輩に、『時間SF』の小説になりそうなアイデアがあるのだがこれで主人公がお金を儲けるような話はできないだろうかと相談を持ち掛けられる。作家はアイデアを授けるが、後日、後輩が実際にその方法を用いてお金を儲けていたことが分かる。上手くいっているように見えたのだが……。

『布団の中の宇宙』
小説を書けなくなり、家族からも見放された作家が、突然スランプを抜け出し素晴らしい新作を発表した。その切っ掛けを与えたのは、ひとり暮らしをするために買った中古の布団だった。その布団の中では、毎夜不思議なことが起こるのだという。

『子どもを沈める』
高校時代の友人が我が子を殺してしまう事件が相次いで起こった。それはどうやら、彼女たちが高校の時に犯してしまったある過ちに起因しているらしかった。次は自分の番なのかもしれない。子どもを殺した友人のひとりからもらった手紙を切っ掛けに、恐ろしい葛藤が始まった。

『トランシーバー』
地震によって妻と幼い息子を亡くした男は、ある日、生前の息子のお気に入りだったおもちゃのトランシーバーが鳴っていることに気が付いた。トランシーバーから聞こえてきたのは息子の声だった。これはきっと幻聴なのだ。そう思いつつも、男はトランシーバーの向こうの息子と交信し続ける。

『私の頭が正常であったなら』
元夫によって目の前で娘を殺され精神を病んだ女性は、療養中の散歩の途中でかすかな女の子の声を聞く。その声は女性にだけ聞こえるようだった。幻聴かと思ったが、毎回散歩のたびに同じ場所でその声は聞こえた。「ママ、たすけて……」と。

『おやすみなさい子どもたち』
少女は船の事故により命を落とした。走馬灯を見ていたが、その内容に覚えがない。「ストップ! ストップ!」と声が掛かり、気が付くと少女は映画館の中にいるのだった。『天使』と名乗る女性が言うことには、別人の走馬灯フィルムが間違って上映されてしまったらしい。少女は天使に頼まれ、まだ船に乗っているはずの仲間の命を助けることを交換条件に自分の走馬灯フィルムを探す手伝いをすることに。

一話一話がわりと短かめなので、寝る前とかちょっとした空き時間にさらっと読めます。
実はこの本、最初図書館で借りて読んだのですが、気に入ったので改めて購入しました。笑
どのお話も、どこか優しい雰囲気があって、お気に入りです。
個人的には最後の『おやすみなさい子どもたち』がいちばん好きです。
読後はほっこりした気分になるような、そんな本でした。

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